山の歩きさん 口大野の上田たね枝さん

 山が春めいてきたころ、山の中では、
みんなが春のこしらえをしとったそうです。
山の区長さんは餅花の木だそうですが、
長い冬の眠りから、一番早く目を覚まして、
ねむの木に、
ねむの木は山の歩きさんで、
山の木一本一本に、
「もう春が来るで目を覚まして、
芽ごしらえをしておくんなれよう」
と、毎日、毎日、毎日、布令て回っただそうです。
それで、山じゅうで一番早く芽を出すのが、
餅花の木で、一番遅なるのが、ねむの木で、
「この木は枯れとるだろうか」と思うほど、
遅いのだそうです。☒