むかしあるところになあ、
わたしのようにでらい口のよい(口の達者な)お婆さんがあって、
ほいてむかしは塩を俵に入れて買いよった。
一俵これぐらいの。
今は紙袋(かんぶくろ)に入れて買うてきますやけど、
好きなほど。 ほいで、宮津に塩を買いに行ったんですってなあ。
塩を二俵買うてなあ、塩を、ほの、一輪車はないで、
昔はもっこちゅうもんに入れて担うてもどったんです。
もどりよったところが、田んぼにお爺さんが仕事しとって、
「お婆さん、塩を買うて来たんか」言うたら、
「はい、塩を買うてきた」
「なんぼじゃった」言うたら、
「はい、二俵じゃ」いうてお婆さんが言うで、
「代(だい)わいな」ちゅうたら、
「台はもっこじゃわいな」言うで、
「値(ねえ)はどうじゃ言うこっちゃ」
「姉(ねえ)は十八で、家(うち)で機織りしとるわな」
「なあした口がよいじゃいな」言うたら、
「はあ、口は八人もあるで、口はよいわいなあ」
「お前、ほおげた(ほお骨)よいわいな」言うたら、
「はあ、ほうの木の下駄より桐の木の下駄のほうが
よいわいな」ちゅうて言うた。
しゃあないで、お爺さんは笑うとった。それだけの話です。☒