前田が割れた 森本の奈良すがさん

 昔は正月の朝、験を祝ったそうで、
分限者の家では、恵比須っさんや、
大黒さんを祭って、験を祝ったけど、
貧乏人の家では、なんにも祭るもんがないもんで、
ある家では、
正月の朝は、いろりに火をようもやして、
お婆さんが、パアッと、着物の前をまくって
「前田が割れた」
いうたら、お爺さんがおんなじように前をまくって
「おおそうかいや、そんならうらあ、おおぼがぶらりだ」
いうて、いろりの火をどんどんたいて、験を祝っとったって
 いちごさんすけ、さんがらがやいた ☒

[解説]
前田・・・ 家の前にある田 田に割れ目が出来るほど日照があると
豊作とか ええ天候
おおぼ・・・ 大穂 稲穂が垂れ下がるほど稔りが良いことを願う
いちご・・・ 昔話の終わり文句「いちがぶらり」の変形