米出し地蔵  上背屋の大江ふささん

 むかしむかし、お爺さんとお婆さんがあったげながな。
 そして、お正月前に宮津へ何か買いに行かんならんで、  お正月せんならんで、
「行ってくるわな」 言うて、そのお婆さんにそう言うて、
お爺さんが出たんです、宮津へ。
 そして、この下のお宮さんのあたりまで行ったら、びったれが降るでしょうがな。
そこに裸のお地蔵さんが、 そこに、でんぶらさんと寝とっただって。
 そしたらなあ、そのお爺さんが、
「かわいそうになあ。おめえはこんなところ にちめたかろうなあ」言うて、
「まあ、宮津へ行くのやめにして、 いんで、あたらしたるわ」 言うて、
その大けなお地蔵さんを自分の家 へ持ってもどって。
 そして、お婆さんが、
「お爺さん、えれえ早かったわね」言うたら、
「おうおう、そんなとこへ行きどころか。 このお地蔵さんがかわえそうで、連れてもど
ったさけえ、ええ火ぃ焚いてあたらしたってくれえ」 ということだってな。
 それからお爺さんは重てえ地蔵さんを負うて もどって、そして火ぃ焚いて、
ひとはたあたらしとっただに。
びったれに濡れたもどったお地蔵さんを、 「ちめたかろう、寒かっただろう」
言うて、火ぃ焚いてあたらしただって。
 
ぬくもったじぶんに、なあ、
でえぶんぬくもったじぶんに見とったら、 鼻からお米がポロリと出ただって。
「まあ重宝なことだねえかや。
まあ、婆さん、まあ見い。まあ、こんなところに
地蔵さんが鼻から米が出たわ」 ちゅうことだげな。
 それから見とるところが、
今度はこっちの鼻の穴からも米が出とるげな。
そして、だんだんぬくもって、まあ、ボロボロボロボロ出て、
「ほい、その、まあ、入れ物受けんかったらどもならん」ということになってな。
そしてお婆さんがお酒飲む物もって受けとったら、
またたく間にいっぺえになったそうな。
 へからさあ、「今度はもっと出さねばあかんわや」ちゅうことで、また入れ物でえて。
そしたらまたお米がこう出て、またたく間にいっぺえになった。
 それでまあ、座敷にな、お米がいっぺえ、並ぶとこもねえほど並べとった。

 へから、隣のお爺さんがな、それでちょっと隣から来てみたら、
座敷中にお米があるさけえ、
「こりゃ、おみゃあ、どうしたことだ。 こんなぎょうさんなもんをさあ」 言ったところが、
「昨日、あんとこ行ってきたら、宮津まで行こう思うたら、
地蔵さんが今の話ですわな、そいでさあ、連れてもどって、
こうしてあたらしとったら、このことだわや」
「その地蔵さん、お前もぎょうさんたまったもんに、わしにも貸してくれや」
ということになって。
それから、性のええお爺さんやさけえな、「おうおう、持っていねえ」
ということでなあ、持っていんだだってな、その隣のお爺さんが。
 そしてまあ、あたらしとったところが、米がポロンポロン出たってなあ。
「こりゃまあ、ありがてえこった。 けえど、いなさんならんと。日中ひなかおったら。」
それでまあ、鼻を火箸で二つところ突いただって、よけえ出るように。
へえ、ピチンととまってしもうた。そえからは出なんだって。
 そえからな、腹が立って、そこっとこまかせに
そんお地蔵さんかたげて、かどへ持ってって、 ぶつけちゃっただって。
 そしたらさ、割れて、 それがいちがぶらり。☒